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実写化の評価

映画版『朽ちないサクラ』は、県警広報広聴課に勤める森口泉が、親友の殺害事件の真相を追う姿を描いた警察サスペンスです。

原作が持つ不穏で重厚な空気感を、映像ならではの緊張感で丁寧に再現しています。

一度は犯人逮捕で終わったかに見える事件ですが、森口泉は“ある事象”をきっかけに真犯人の存在に気づきます。

この核心となる“ある事象”が映画では改変されており、やや現実味に欠ける描写になってしまった点だけが惜しい部分です。

それでも、原作の魅力を大切にしながら映像作品としての緊張感を高めた、完成度の高い実写化であり、星4つの評価としました。

原作小説と映画の違い(ネタバレあり)

原作小説と映画の違い(比較表)

原作小説と映画の特徴を、まずは一覧表で分かりやすく整理します。

項目原作小説ドラマ
舞台設定架空の「米崎県」実在の「愛知県」
森口泉の所属米崎県警・広報広聴課愛知県警・広報広聴課
森口泉が真相に気づくきっかけ犯人の遺留品に残された「行動記録」の矛盾津村千佳が残した「おみくじ」の“桜”の文字
富樫隆幸の呼び方泉を「森口」と苗字で呼ぶ「お前さん」→ラストで「お前」
富樫隆幸の人物像常識的な上司。終盤で“国家のための正義”を語る肩に触れる描写など、ややハラスメント的な言動が追加

森口泉が真相に気づいた理由

森口泉の親友・津村千佳の殺人事件は、被疑者死亡により起訴されないまま終結します。

しかし森口泉は、事件の中に残された“ある事象”から、公式発表とは異なる真犯人の存在に気づきます。

原作小説|犯人の行動記録

犯人の遺留品には、津村千佳が亡くなる直前の1週間分の行動記録が残されており、犯人が千佳を調査していたことが分かります。

しかし、その行動記録の“初日の夜”には、森口泉と千佳が会っていた事実が記されており、泉は強い違和感を覚えます。

あの夜、千佳は「自分の潔白を証明する」と泉に約束し、その翌日からの行動が原因で殺害されたと考えられています。

にもかかわらず、泉と会った日から行動確認が始まっているのは不自然です。

さらに、泉が千佳と会っていたことを知っているのは、警察内部のわずか3人だけ。

この矛盾から、泉は行動記録は警察によって捏造されたものと確信します。

映画|津村千佳が引いたおみくじ

映画版では、殺害される直前に津村千佳が上司に電話をかけ、「神社で引いたおみくじを見て真相がわかった」と伝えます。

森口泉は後にそのおみくじを見つけ、冒頭に書かれた「桜」の文字から、警察内部で公安を指す隠語“サクラ”を連想し、公安が黒幕で実行役は身近な警察関係者だと気づきます。

しかし、たまたま引いたおみくじの文言だけで、千佳と泉の2人ともが一気に公安へ辿り着く構成は現実味に欠ける印象があります。

実行犯の人物像

本作の真犯人は公安で、実行犯は富樫隆幸です。

富樫隆幸は元公安で、現在は県警広報広聴課長として森口泉の上司を務めています。

泉は、性格も仕事ぶりも信頼できる富樫を上司として尊敬しており、その人物像との落差が物語の衝撃をより強めています。

原作小説

原作小説では、富樫は部下である森口泉を、普通に「森口」と苗字で呼んでいます。

終盤で森口泉に真相を問われた際には、自らの立場ゆえの“正義のあり方”を静かに語ります。

「百人の命とひとりの命、たしかに秤にかけることはできん。
だが、秤にかけなければいけない立場の人間もいる。
きれいごとじゃあ、国は守れん」

引用元:柚月裕子『朽ちないサクラ』徳間書店

映画

映画版で安田顕が演じる富樫は、森口泉を「お前さん」と呼び、ラストで真相に迫られた際には「お前」と呼び捨てにします。

さらに、元気づける意図で泉の肩に触れる場面も複数あります。

これらの言動は、現実の職場であればハラスメントと受け取られ得るもので、2024年制作の映画としては観客に余計な違和感を与える描写となっています。

舞台設定の違い

原作小説

原作小説の舞台は架空の米崎県で、森口泉は米崎県警広報広聴課に勤務しています。

映画

映画版では舞台が実在の愛知県に置き換えられ、より身近でリアルな環境として描かれています。

森口泉の所属も、愛知県警広報広聴課に変更されています。

あらすじ(ネタバレあり)

親友・津村千佳の殺害

県警広報広聴課に勤務する森口泉にとって、高校時代からの親友である津村千佳は特別な存在です。

津村千佳は米崎新聞の県警担当記者として記者クラブに常駐していました。

ある日、米崎新聞が警察の不祥事をスクープし、県警は苦情の電話で大混乱に陥ります。

泉は、千佳にうっかり内部情報を話していたことから、千佳がネタ元ではないかと疑い、夜に直接会って真相を確かめようとします。

千佳は「自分ではない」と否定し、代わりに“本当のネタ元を突き止めて、自分の疑いを晴らす”と泉に約束します。

しかしそれから1週間後、千佳は他殺体となって発見されます。

真相に近づく森口泉|警察内部に潜む影

津村千佳の殺人事件は、捜査一課の梶山課長が指揮を執って捜査が進められます。

やがて事件の背後には、公安と新興宗教団体の存在が絡んでいることが判明し、捜査は難航します。

広報広聴課の富樫課長の協力もあり、警察は宗教団体の信者である浅羽弘毅にたどり着き、逮捕状を取得します。

しかし逮捕直前、浅羽は交通事故で死亡してしまい、事件は「被疑者死亡のまま終結した」とされ、捜査は打ち切られます。

ところがその後、森口泉は、公安が事件の黒幕であり、実行犯は富樫であるという重大な事実に気づきます。

すでに事件は終結しているため再捜査はできません。

泉は、上司であり実行犯でもある富樫に、自分の確信を直接伝えることになります。

富樫は肯定も否定もせず、物語はこの場面で幕を閉じます。

真犯人が逮捕されないまま終わることで、重い余韻が残ります。

<森口泉が富樫に伝えた内容>
・富樫は広報広聴課長でありながら、いまも公安とつながっている。
・事件の発端となったストーカー殺人の犯人は、宗教団体の信者であり公安のエス(情報提供者)だった。
・真相に近づいた津村千佳は、公安の指示を受けた富樫によって殺害された。
・千佳殺害の犯人として浅羽弘毅を仕立て上げ、事故死させることで事件を終結させた。
・浅羽弘毅もまた、宗教団体の信者であり公安のエス(情報提供者)だった。

映画『朽ちないサクラ』の基本情報

ストーカー殺人、警察の不祥事、親友の死・・・それは事件の発端に過ぎなかった

監督:原廣利
出演:杉咲花、萩原利久、森田想、坂東巳之助、駿河太郎、遠藤雄弥、和田聰宏、藤田朋子、豊原功補、安田顕、ほか
上映時間:119分
公開:2024年6月21日

【配信情報】

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小説『朽ちないサクラ』の基本情報

ストーカー殺人、警察の不祥事、親友の死・・・それは事件の発端に過ぎなかった

著者:柚月裕子
出版社:徳間書店
刊行日:2015年2月28日/文庫化:2018年(徳間文庫)

まとめ|『朽ちないサクラ』の総評

本作は終盤で真犯人が判明しますが、県警の一署員である森口泉には、公安を追及する術がないまま物語が終わります。

真犯人が逮捕されないという異例の結末は、原作小説と同じ構造です。

映画版では、森口泉が真相に気づく“おみくじ”の改変にやや違和感はあるものの、それ以外の部分は原作が持つ不穏で重厚な空気感を丁寧に映像化しています。

また、森口泉を演じた杉咲花が、上映中に一度も笑顔を見せない演技で、森口泉の苦悩と緊張感を見事に表現しています。

ラストの異例の結末は好みが分かれるかもしれませんが、作品としての完成度は高く、安心しておすすめできる一本です。

【配信情報】

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※本ページの情報は2026年5月時点のものです。最新の配信状況は各配信サイトにてご確認ください。