実写化の評価

ドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』は、原作小説とは“別物”として楽しむ作品だと言えます。

原作と共通しているのは、「主人公の河野悦子がファッション雑誌の編集者を夢見て出版社に入社するものの、校閲部に配属されてしまう」という設定のみで、物語や登場人物の多くはドラマ向けに大幅な改変が施されています。

それでもドラマとしての完成度は高く、エンタメ作品として非常に魅力的です。

今回はあくまで「実写化として原作をどれだけ忠実に再現しているか」という観点で星4つとしましたが、ドラマ単体で評価するなら星5つを付けたいほどの完成度です。

作品概要と本記事のポイント

『校閲ガール』は宮木あや子による職業小説で、主人公はファッション雑誌の編集者を夢見て出版社に入社するものの、校閲部に配属されてしまいます。

この作品は2016年、日本テレビ系の水曜ドラマ(全10話)として映像化され、タイトルも「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」へと変更されました。

本記事では、原作とドラマ版の主な違いや、映像化にあたっての改変点をわかりやすく紹介していきます。

ドラマ『地味にスゴイ 校閲ガール・河野悦子』の紹介

夢のファッション誌編集者を目指し、出版社に入社。
なのに校閲部に配属。しかし地味な仕事でも真っ向勝負!

監督:佐藤東弥、小室直子、森雅弘
出演:石原さとみ、菅田将暉、本田翼、青木崇高、江口のりこ、岸谷五朗、ほか
放送局:日本テレビ系・水曜ドラマ枠
話数:全10話/各話約50分
放送日:2016年10月5日〜12月7日

小説『校閲ガール』の紹介

ファッション誌の編集者になるはずだったのに、どうして私が校閲に!?

著者:宮木あや子
出版社:角川書店
刊行日:2014年3月14日/文庫化:2016年(角川文庫)

『地味にスゴイ 校閲ガール・河野悦子』あらすじ

作品概要|全体の流れ

ファッション誌の編集者を夢見る河野悦子は出版社に入社しますが、希望とは異なり校閲部に配属されます。

地味で細かな作業が中心の部署でも、悦子は持ち前の行動力を生かして原稿の誤りを徹底的に正し、作品の裏側にある事実にも踏み込んでいきます。

夢と現実の間で揺れながらも、校閲という仕事の重要さに気づき、成長していく姿が描かれます。

※原作とドラマでは物語が大きく異なるため、共通部分のあらすじはこの程度に留めています。
むしろこの簡潔さが、ドラマ版で行われた大幅な改変の大きさを物語っています。

原作とドラマの違い(ネタバレあり)

小説版とドラマ版は、「河野悦子がファッション誌の編集者を夢見て出版社に入社するものの、校閲部に配属される」

という基本設定こそ共通していますが、登場人物や物語の展開は大きく異なり、ドラマ独自の内容になっています。

ここでは、その中でも特に大きな相違点に絞って紹介します。

ジャンルの大転換|原作は職業小説、ドラマはラブコメ

原作小説

小説版『校閲ガール』は「職業小説」として描かれており、悦子がさまざまな校閲業務に向き合い、仕事をやり遂げていく姿が物語の中軸になります。

ややコメディ要素もありますが、基本的には校閲の奥深さや厳しさを丁寧に描いています。

ドラマ

一方、ドラマ版は方向性が大きく異なり、完全に「ポップなラブコメディ」へと振り切られています。

校閲の仕事も登場しますが、物語の主軸は恋愛やテンポの良い掛け合いで、校閲はあくまで物語を彩る要素のひとつとして扱われています。

登場人物|大幅な再構築

主役の河野悦子を除けば、登場人物は“同じ名前の別人”と考えた方がしっくりきます。

それほどドラマ版ではキャラクター設定が大幅に再構築されています。ここまで大胆に変えられていると、むしろ割り切って楽しめるほどです。

河野 悦子

原作小説

小説版の河野悦子(24歳)は、大卒で新卒入社して2年目の若手社員。

校閲の現場で一定の経験を積み、着実に仕事をこなせる人物として描かれています。

職人気質で、校閲という仕事に真摯に向き合い、地道な調査や事実確認を淡々と積み重ねるタイプ。
必要とあれば現場に足を運びますが、ドラマのような突飛な行動は取りません。

また、あえて“生意気で口が悪い”態度を演じ、校閲部内で気に入られないようにしています。

ドラマ

一方、ドラマ版で石原さとみが演じる悦子(28歳)は、7度目の採用面接でようやく合格したキャリア入社組。

明るく奔放でエネルギッシュ、感情表現も豊かで、喜怒哀楽がはっきりした“ラブコメの主人公”らしいキャラクターです。

気になることがあれば即行動し、作家のもとへ押しかけたり、現場に飛び込んだりと、常識にとらわれない大胆さが魅力になっています。

また新人として校閲を一から学ぶ姿が描かれるため、視聴者も校閲の仕事を理解しやすい構成になっています。
小説でも校閲の描写は丁寧ですが、映像ならではのわかりやすさがあります。

校閲の仕事自体は描かれるものの、ドラマではシリアスさよりもコメディ色が強く、物語を盛り上げる要素として活用されています。

折原 幸人

原作小説

小説版の折原幸人(25歳)は、作家兼モデルとして登場しますが、物語への関与は限定的で、あくまで脇役のひとりにとどまります。

悦子が校閲を担当した作家として接点が生まれ、終盤に2度デートをするものの、それ以上の関係には発展しません。

ドラマ

一方、ドラマ版で菅田将暉が演じる幸人(23歳)は、原作から大きく再構築されたキャラクターで、主役の悦子に次ぐ重要人物へと格上げされています。

悦子の片思いから始まり、森尾を交えた三角関係が展開するなど、ラブコメディらしい要素を担う存在です。

さらに、父親が大御所作家・本郷大作(鹿賀丈史)という設定もドラマ独自のアレンジとなっています。

森尾 登代子

原作小説

小説版の森尾(24歳)は、悦子と同期入社した女性3人のひとりで、女性誌『C.C』の編集者です。

物語への関与は限定的で、あくまで脇役のひとりにとどまります。

多忙な編集業務に追われ、徹夜続きで髪や服装も乱れがちな姿が描かれ、編集者という仕事の過酷さを象徴する存在になっています。

ドラマ

一方、ドラマ版で本田翼が演じる森尾(26歳)は、悦子の高校時代の後輩であり、悦子が憧れるファッション誌「Lassy」の編集者という設定に変更されています。

幸人との同居をきっかけに物語の中心に深く関わり、悦子との三角関係が展開するなど、ドラマでは主要人物として描かれています。

貝塚 八郎

原作小説

小説版の貝塚(26歳)は、文芸編集部に所属する悦子の2年先輩で、作家と校閲部の間でゲラを丸投げするいい加減な編集者として描かれています。

編集者という立場上それなりに登場場面はあるものの、物語全体では脇役のひとりにとどまります。

ドラマ

一方、ドラマ版で青木崇高が演じる貝塚(36歳)は、作品を盛り上げる“最も魅力的なキャラクター”として再構築されています。

悦子との軽快な掛け合いはドラマの大きな見どころのひとつで、ゲラを丸投げする一面は残しつつも、作家に寄り添う親身で熱い人物像が加えられています。

藤岩 りおん

原作小説

小説版の藤岩(24歳)は、悦子と同期入社した女性3人のひとりで、文芸編集部の編集者として登場します。

東大出身ということもあり、同期の悦子や森尾とは一定の距離を置いていましたが、担当作家の待ち会で高級レストランに行くことになり、悦子にファッションを教えられたことをきっかけに、少しずつ関係が近づいていきます。

ドラマ

一方、ドラマ版で江口のりこが演じる藤岩(35歳)は、校閲部のまとめ役として存在感を放ち、新人の悦子に校閲の仕事を丁寧に指導します。

まじめで堅物な性格はそのままに、より人間味やユーモアが加えられたキャラクターとして再構築されています。

米岡 光男

原作小説

小説版の米岡(26歳)は校閲部所属で、悦子の2年先輩にあたります。

原作では、主人公である悦子に次ぐ重要人物として位置づけられています。

落ち着いた性格で、悦子の気持ちをよく理解し、的確な助言をくれる頼もしい存在です。
また、悦子が“生意気で口が悪い”キャラを演じていることを唯一知る人物でもあります。

ふたりはファッションショーや食事に出かけるほど仲が良いものの、互いを恋愛対象としては見ていません。

さらに、文芸編集部の貝塚とは同期入社で気が合い、しばしば小説談義で盛り上がる間柄です。

ドラマ

一方、ドラマ版で和田正人が演じる米岡(36歳)は、校閲部の中では悦子と藤岩以外の“その他大勢”のひとりという扱いになり、登場場面も少なく、完全に脇役へと位置づけられています。

今井 セシル

原作小説

小説版の今井(23歳)は、短大卒の縁故入社で、悦子より入社は1年早いものの年齢は1歳下の受付嬢として登場します。

資産家の家庭に育ち、生前贈与されたマンションで一人暮らしをしているお嬢様タイプです。

悦子とは仲が良く一緒に食事に行くこともありますが、悦子からは「この子はなんで働いているんだろう」と思われている存在でもあります。

ドラマ

一方、ドラマ版で足立梨花が演じる今井(23歳)は、原作と同じく受付嬢として描かれています。

悦子のことを「コーエツ先輩」と呼んで慕い、仲の良い関係性もそのままです。

今井に関しては原作から特に改変がなく、ある意味では貴重な“原作に忠実なキャラクター”になっています。

まとめ|細部を超えて、とにかく痛快で面白い

小説の実写化をレビューする際は、通常「キャスティング」「改変内容」「映像表現」「音響効果」などを基準にすることが多いです。

しかし、ドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』に関しては、そうした細部を抜きにしても、とにかく痛快で面白い作品に仕上がっていて、素直に視聴をおすすめできるドラマです。

そして、もしドラマを先に観てから原作小説を読むと、「この小説は地味だけどスゴイ!」と感じるはずです。