実写化の評価

『ストロベリーナイト・サーガ』は、原作小説との比較ではなく、どうしても竹内結子版の旧シリーズ(ドラマ・映画)と比較される作品です。

特に、竹内結子版の最後の映像化となった2013年放送『アフター・ザ・インビジブルレイン』からわずか6年という短いスパンで再ドラマ化が行われたことで、視聴者の多くが竹内結子版の印象を強く残したまま『サーガ』に向き合うことになりました。

制作側は、旧シリーズとの差別化を意識して設定や構成に多くの変更を加えていますが、その試みが作品の魅力を削ぐ方向に働き、結果として“改変が裏目に出た”と感じられる部分も少なくありません。

全体として『サーガ』は、物語の軸が定まらず、ちぐはぐで浅い印象が終始つきまとう仕上がりになっており、旧シリーズの強さを踏まえないまま別作品を作ろうとした影響が画面に表れているように感じられます。

こうした理由から、今回は最低評価としました。

作品概要と本記事のポイント

ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』は、2019年にフジテレビ系の木曜ドラマとして全11話で放送された作品です。

各エピソードは、原作小説である、

『ストロベリーナイト』(長編)
『ソウルケイジ』(長編)
『シンメトリー』(短編集)
『インビジブルレイン』(長編)
『感染遊戯』(短編集)
『ブルーマーダー』(長編)

の6作から選ばれた物語をもとに構成されています。

本記事では、原作および竹内結子版の旧シリーズと『サーガ』の主な違い、さらに再ドラマ化にあたって加えられた改変点について、分かりやすく整理して紹介していきます。

ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』の紹介

この女、危険なほどに、刑事。

監督:石川淳一、山内大典、洞功二
出演:
<警察側>
二階堂ふみ、亀梨和也、重岡大毅、葉山奨之、宍戸開、中林大樹、今野浩喜、神保悟志、山口馬木也、岡田浩暉、江口洋介、ほか
<ゲスト側>(出演順)
坂東龍汰、 山口まゆ、寺脇康文、堀井新太、山谷花純、波岡一喜、山田杏奈、小林隆、今井悠貴、山本耕史、寺西拓人、羽場裕一、田邊和也、宮川一朗太、石井正則、山中聡、要潤、大下ヒロト、陰山泰、ほか
放送局:フジテレビ系
放送時間:全11話/各話約50分
放送日:2019年4月11日〜6月20日

小説『ストロベリーナイト』の紹介

姫川玲子シリーズ第1作。(長編)

※連続ドラマでは、「ストロベリーナイト」(第1話)として映像化されました。

著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2006年2月25日/文庫化:2008年9月(光文社)

小説『ソウルケイジ』の紹介

姫川玲子シリーズ第2作。(長編)

※連続ドラマでは、「ソウルケイジ」(第2話、第3話)として映像化されました。

著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2007年3月25日/文庫化:2009年10月(光文社)

小説『シンメトリー』の紹介

姫川玲子シリーズ第3作。(短編集・全7編)

※連続ドラマでは、「右では殴らない」(第4話)、「左だけ見た場合」(第5話)の2エピソードが映像化されました。

著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2008年2月25日/文庫化:2011年2月(光文社)

小説『インビジブルレイン』の紹介

姫川玲子シリーズ第4作。(長編)

※連続ドラマでは、「インビジブルレイン」(第7話、第8話、第9話)として映像化されました。

著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2009年11月25日/文庫化:2012年7月(光文社)

小説『感染遊戯』の紹介

姫川玲子シリーズ第5作。(短編集・全4編)

※連続ドラマでは、「アンダーカヴァー」(第9話)が映像化されました。

著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2011年3月25日/文庫化:2013年11月(光文社)

小説『ブルーマーダー』の紹介

姫川玲子シリーズ第6作。(長編)

※連続ドラマでは、最終話の「ブルーマーダー」(第10話、第11話)として映像化されました。

著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2012年11月20日/文庫化:2015年6月(光文社)

小説『インデックス』の紹介

姫川玲子シリーズ第7作。(短編集・全8編)

※ドラマでは、「夢の中」、「闇の色」(第6話)の2エピソードが映像化されました。

著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2014年11月20日/文庫化:2017年8月(光文社)

『ストロベリーナイト・サーガ』あらすじ(ネタバレなし)

作品概要

警視庁捜査一課の女性刑事・姫川玲子が、鋭い直感と大胆な行動力を武器に、凶悪で不可解な事件の真相へ迫っていく本格警察ドラマです。

姫川班を中心に、警察としての意地とプライドを懸けた捜査が緊張感あふれる映像で描かれています。

全11話で9つのエピソード(うち長編3作)を扱う構成のため、物語の展開はかなりスピーディーです。

その影響で、シリーズの特徴である“犯人側の苦悩や闇”の掘り下げがやや薄くなった印象があります。

また、『サーガ』で描かれる9つのエピソードのうち、竹内結子版の旧シリーズですでに映像化されているものが6つを占めており、旧シリーズと正面から比較される構図になっています。

『ストロベリーナイト・サーガ』の各エピソード

第1話「ストロベリーナイト」・・・竹内結子版で映像化あり
第2話、第3話「ソウルケイジ」・・・竹内結子版で映像化あり
第4話「右では殴らない」・・・竹内結子版で映像化あり
第5話「左だけ見た場合」・・・竹内結子版で映像化あり
第6話「夢の中」「闇の色」・・・竹内結子版では未映像化
第7話~第9話「インビジブルレイン」・・・竹内結子版で映像化あり
第9話「アンダーカヴァー」・・・竹内結子版で映像化あり
第10話、第11話「ブルーマーダー」・・・竹内結子版では未映像化

『竹内結子版』と『サーガ』の違い(ネタバレあり)

「ダブル主演」が抱えた弱点

竹内結子版

主演は、姫川玲子を演じた竹内結子でした。

一方で、西島秀俊が演じた菊田和男は、姫川との間にほのかな恋愛要素こそあるものの、姫川班では姫川・葉山に次ぐ“3番手”という立ち位置にとどまっています。

キャラクターとして特別な個性や深い闇はないですが、西島秀俊の演技によって、限られた登場シーンでも強い存在感を放っていました。

サーガ

『サーガ』では、二階堂ふみと亀梨和也のダブル主演体制が採用されています。

二階堂ふみが演じる主役・姫川玲子については特に問題はありませんが、課題となったのは亀梨和也が演じる菊田和男の扱いです。

菊田和男は、原作小説でも竹内結子版でも“個性の強いキャラクター”ではなく、登場シーンも多くありません。

しかし『サーガ』ではダブル主演にするため、菊田を物語の中心に据えるべく多くの改変が加えられています。

たとえば第1話「ストロベリーナイト」では、本来は別のキャラクターが担う重要な場面が、菊田のシーンへと置き換えられています。


大塚巡査の訃報を知り混乱する姫川を抑える役目は、原作・旧シリーズでは姫川班最年長の石倉巡査部長が務める場面ですが、『サーガ』では異動してきたばかりの菊田が担当しています。

また、大塚巡査が情報屋・辰巳から仕入れたネタを聞き出すのは本来ガンテツ(勝俣警部補)の役割ですが、これも菊田に変更されています。

こうした“ダブル主演ありき”の改変によって、本来は別の重要キャラクターが担うべきシーンが菊田に置き換えられた結果、物語の流れに不自然さが生まれ、他キャラクターの存在感も薄まってしまいました。構成面で無理が生じた典型的な例と言えます。

オープニングとエンディングから失われた重厚感

竹内結子版

オープニングは、モノクロ映像の姫川から不気味ないちごが現れ、いちごの粒が無数の人の目へと変化していくという、強烈なビジュアルで構成されています。

この独特で不穏な映像表現が、ストロベリーナイト・シリーズを象徴するオープニングとして強い印象を残しました。

サーガ

オープニングは、アップテンポの楽曲に合わせて、姫川と菊田が目隠しをしたまま叫び、激しく首を振る映像で構成されています。

姫川だけであれば作品のテーマ性として理解できますが、菊田まで同じ演出で登場することで、視聴者に強い違和感を残す仕上がりになっていました。

さらに、エンディングで流れる楽曲は亀梨和也の「Rain」。

その曲を聴きながら、亀梨和也が演じる菊田のシーンが続く構成は、どうしても“本人の歌 × 本人の演技”が重なってしまい、物語への没入感を削いでしまう演出になっています。

キャスト陣の魅力

竹内結子版

竹内結子版『ストロベリーナイト』の最大の魅力は、主要キャスト全員が“はまり役”として見事に機能していた点にあります。

主演の竹内結子筆頭に、西島秀俊、小出恵介、宇梶剛士、渡辺いっけい、遠藤憲一髙嶋政宏ん、生瀬勝久、武田鉄矢、実力派がずらりと揃いました。

それぞれの俳優が役柄に深みを与え、物語の緊張感や世界観を強固に支えたことで、シリーズ屈指の完成度を誇る実写化作品として成立していたと言えます。

サーガ

竹内結子版のキャスト陣があまりにも完成度が高かったため、再ドラマ化となる『サーガ』は、誰がキャスティングされても厳しい評価を受けざるを得ない――そんな不利な状況を背負っていたのは事実です。

しかし、そのハンデを差し引いても、以下の2名のキャスティングは特に厳しい出来でした。

井岡 博満(所轄:巡査部長)

所轄署の井岡巡査部長は、本来“お調子者で場の空気を和らげる存在”として、作品全体の緊張感をほどよく緩める役割を担うキャラクターです。

ところが、今野浩喜が演じる井岡は、大きな声で騒ぐお調子者ではあるものの、目が笑っていないために「本気で怒っている人」に見えてしまうという致命的なズレが生じています。

その結果、緩和役としての魅力が機能せず、キャラクターの意図が画面にうまく伝わらない点が非常に残念でした。

勝俣 健作(捜査一課:警部補)

主役の姫川に匹敵する存在感を放つのが、捜査一課の勝俣警部補(通称:ガンテツ)です。

暴力や賄賂も辞さず、姫川や日下を平然と陥れる――徹底した“憎まれ役”として物語に強烈な緊張感をもたらすキャラクターです。

しかし、江口洋介が演じる勝俣には、決定的なミスマッチがありました。

どれほど悪態をつき、粗暴な振る舞いを見せても、背が高くてかっこよく、品のある江口洋介の佇まいが「いい人」に見えてしまうのです。

その結果、ガンテツ特有の“ねっとりとした不気味さ”や“底知れない悪意”が十分に伝わらず、キャラクターの本来の魅力が薄れてしまった点は大きな欠点と言えます。

まとめ|二番煎じから抜け出せなかった理由

ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』は、どうしても竹内結子版の旧シリーズ(ドラマ・映画)と比較される宿命を背負った作品でした。

旧シリーズとの差別化を図るために設定や構成へ多くの変更を加えたものの、その試みはことごとく噛み合わず、結果として“ちぐはぐで浅い印象”が終始つきまとう仕上がりになってしまいました。

唯一楽しめる可能性があるとすれば、原作小説を未読で、かつ竹内結子版の映像も未視聴という、かなり限定的な視聴者層に限られます。


しかし実際には、多くの視聴者が竹内結子版を高く評価していたため、『サーガ』が共感を得ることは難しかったと言えます。

そもそも、竹内結子版の最後の映像化から、わずか6年という短いスパンで再ドラマ化が行われた理由は、今振り返っても疑問が残ります。