実写化の評価
ストロベリーナイト・シリーズ最後の映像化となったSPドラマ『アフター・ザ・インビジブルレイン』は、映画『インビジブルレイン』の後日談として、各所轄へ散った姫川班の姿を5本の短編で描いた作品です。
エピソードの主役は、登場順に 菊田、葉山、姫川、日下&井岡、勝俣 の5組。
2時間枠の中に5つの物語を収めたため、各話は約20分と短く、巧みに再構成されているものの、どうしても深みや重厚さ、シリーズ特有の緊張感は薄れてしまいました。
それでも、シリーズファンにとっては貴重な映像が随所に盛り込まれており、総合的に星3つの評価としました。
作品概要と本記事のポイント
ドラマ『アフター・ザ・インビジブルレイン』は、フジテレビ系・土曜プレミアム枠の特別企画として放送された作品です。
各エピソードは、原作短編集である『シンメトリー』、『感染遊戯』、『インデックス』の3冊から選ばれた物語をもとに構成されています。
本記事では、原作とドラマ版の主な違いや、映像化に際して加えられた改変点を中心に、作品の魅力をわかりやすく解説していきます。
ドラマ『アフター・ザ・インビジブルレイン』の紹介
それぞれが対峙する新たな事件とは・・・!?
監督:佐藤祐市
出演:
<レギュラー陣>竹内結子、西島秀俊、小出恵介、遠藤憲一、生瀬勝久、武田鉄矢
<ゲスト陣>國村隼、竜雷太、光石研、大高洋夫、杉本哲太、平岡祐太、ほか
放送局:フジテレビ系
放送時間:130分
放送日:2013年1月26日
小説『シンメトリー』の紹介
姫川玲子シリーズ第3作。(短編集・全7編)
※ドラマでは、「東京」(第1話)、「左だけ見た場合」(第4話)の2エピソードが映像化されました。
著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2008年2月25日/文庫化:2011年2月(光文社)
小説『感染遊戯』の紹介
姫川玲子シリーズ第5作。(短編集・全4編)
※ドラマでは、「沈黙怨嗟/サイレントマーダー」(第2話)、「推定有罪/プロバブリィギルティ」(第5話)の2エピソードが映像化されました。
著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2011年3月25日/文庫化:2013年11月(光文社)
小説『インデックス』の紹介
姫川玲子シリーズ第7作。(短編集・全8編)
※ドラマでは、「アンダーカヴァー」(第3話)が映像化されました。
著者:誉田哲也
出版社:光文社
刊行日:2014年11月20日/文庫化:2017年8月(光文社)
『アフター・ザ・インビジブルレイン』あらすじ(ネタバレなし)
東京(第1話)
高校の屋上にあるプールから、水泳部の女子生徒(高校1年)が転落死する事件が発生します。
品川署の姫川と上司の木暮は、自殺・他殺・事故のいずれの可能性も排除せず、慎重に捜査を進めていきます。
なお、このエピソードは原作では姫川が主役ですが、ドラマ版では菊田を中心とした物語へと変更されています。
沈黙怨嗟 / サイレントマーダー(第2話)
高級住宅街にある谷川家で、元官僚の祖父が将棋の最中に知人から殴られる事件が発生します。
北沢警察署の葉山は事情聴取のため現場を訪れ、家族の証言に違和感を覚えながら捜査を進めていきます。
なお、このエピソードは 最終第5話「推定有罪/プロバブリィギルティ」へとつながる伏線 になっています。
アンダーカヴァー(第3話)
硝子食器の卸問屋の店主が自殺したとの通報を受け、池袋署の姫川が現場へ向かいます。
調査を進める中で、店主が取込詐欺の被害に遭っていた事実に気づきます。
姫川は独自に裏社会のバイヤーを装って潜入し、詐欺グループの実態を追いますが、その過程で捜査2課の土井警部補も同じ犯人を追っていることが判明します。
左だけ見た場合(第4話)
マジシャンの吉原秀一が自室で殺害され、現場には吉原の携帯電話が「045666」まで入力された状態で残されていました。
姫川は携帯電話に登録されていた約50名に一人ずつ連絡を取りながら捜査を進めますが、その過程で多くの人物から「吉原は本物の超能力者だった」という証言を耳にします。
なお、このエピソードは原作では姫川が中心となる物語ですが、ドラマ版では日下と井岡がコンビを組んで事件に挑む構成へと変更されています。
推定有罪 / プロバブリィギルティ(第5話)
元官僚とその家族が相次いで殺害される事件が発生し、捜査一課の勝俣(ガンテツ)は容疑者である加納への事情聴取を進めます。
しかし、元官僚たちの住所や顔写真を加納がどのように入手したのか、その一点だけが解明されないまま時間が過ぎていきます。
その後の捜査で、現役および元官僚の個人情報が掲載された特殊なサイトの存在が明らかになります。
なお、このエピソードは原作では勝俣と葉山が中心となる物語ですが、ドラマ版では勝俣を軸とした構成へと変更されています。
原作とドラマの違い(ネタバレあり)
今回のドラマは5本の短編を描いた構成になっていますが、物語の中心となるのは最終話「推定有罪/プロバブリィギルティ」です。
原作小説『感染遊戯』は4本の短編集という形式ですが、最終話「推定有罪/プロバブリィギルティ」は全体の約6割を占める長編であり、前の3作はこの物語へとつながる伏線として機能しています。
ドラマ版では1話あたり約20分という限られた尺のため、多くの要素が省略された構成になっています。
しかし、本来であれば「推定有罪/プロバブリィギルティ」だけで2時間ドラマとして成立しても不思議ではないほどの重厚な内容です。
ここからは、ドラマ「推定有罪/プロバブリィギルティ」で描かれなかった“犯人側の闇”について紹介していきます。
辻内眞人の闇
ドラマ
ドラマ「推定有罪/プロバブリィギルティ」に登場する辻内眞人は、自身が運営するサイトに元官僚たちの住所や顔写真を掲載していましたが、その動機については作中で明確に語られていません。
物語のラストでは、勝俣によって辻内自身の個人情報がネット上にさらされ、恐怖に怯える姿を残したままドラマは幕を閉じます。
原作小説
41歳の辻内眞人は現在、学習塾の講師として働いていますが、もともとは日進大学薬学部を卒業後、濱中薬品に就職していました。
24歳の頃、当時交際していた大友麻由がウイルス性の免疫不全症を発症します。
当時はこの病が性交渉によって感染するものと誤解されていたため、社内で噂が広まり、麻由はそれを苦にして自ら命を絶ってしまいました。
しかし後に、麻由が高校生の時に交通事故で輸血を受けており、その輸血が感染源だった可能性が高いことが判明します。
辻内がこの事実を麻由の父・大友慎治に伝えたことで、悲劇はさらに連鎖します。
慎治は元厚生労働省官僚・長塚利一への復讐を試みますが、誤って辻内の友人でもある長塚の息子・淳を殺害してしまいました。慎治は逮捕後、獄中で死亡します。
恋人の麻由を失い、その父親を殺人犯にし、さらに友人の長塚淳まで失った辻内――
絶望の中で自ら死を選ぶことも考えますが、そのとき彼の中に「殺意を社会に蔓延させる方法」が芽生えてしまいます。
辻内が作り上げたのが、
「Unmask your laughing neighbors(=笑う隣人の仮面を剝げ)」
というサイトでした。
「Unmask your laughing neighbors」
・歴代官僚の事務次官から局長、課長クラスまでの個人情報を掲載
・生年月日、学歴、省内での役職、現住所、顔写真など詳細な情報
・誰かが情報提供を求めると、匿名のユーザーが代わりに情報を提供
・辻内自身は調査を行わず、寄せられた情報を掲載するだけ
捜査本部は連続官僚殺しの情報源がこのサイトであることを突き止めます。
しかし辻内は「個人情報を掲載しただけ」であり、行政の業務を妨害したわけでも、殺人を犯したわけでもないため、法的に逮捕することができません。
物語の終盤、辻内はついに自分自身の個人情報をサイトに掲載します。
その時の勝俣(ガンテツ)と葉山の会話がこちらです。
「個人情報って、何を書いてあるんだ」
『もう、全部ですよ。旧姓が矢部であることから、現在の住所氏名、年齢経歴、大友麻由という恋人の死、旧厚生省、外務省への恨み、長塚親子の事件の顚末から、もう何もかもです。あれじゃ……』
引用元:誉田哲也『感染遊戯』光文社
そして辻内は、元官僚の父と妻を殺された岡田晃一によって殺害され、物語は幕を閉じます。
まとめ|ファン必見の見どころ総整理
ドラマ『アフター・ザ・インビジブルレイン』には、シリーズファンにとって見逃せない貴重なシーンがいくつも盛り込まれています。
「アンダーカヴァー」では、姫川が裏社会のバイヤーになりきり、派手な衣装と関西弁で潜入するという、普段はまず見られない貴重な姿が描かれます。
「左だけ見た場合」では、シリーズ随一の個性派コンビである日下と井岡がタッグを組み、軽妙な掛け合いを見せながらテンポよく捜査を進めます。
「沈黙怨嗟/サイレントマーダー」では、これまで深掘りされる機会が少なかった葉山の高い捜査能力が際立ち、キャラクターの新たな一面が描かれます。
ドラマ全体としては重厚な雰囲気よりもテンポの良さが際立ち、気軽に視聴できる構成になっています。
シリーズを追いかけてきたファンなら、ぜひ一度チェックしておきたい作品です。