実写化の評価

映画『アウト&アウト』は、木内一裕による小説「矢能政男シリーズ」の第2作『アウト&アウト』を原作とした実写化作品です。

元ヤクザの探偵・矢能政男を主人公に据えた痛快ハードボイルドで、終盤では悪徳な衆議院議員を相手に、「やったことで裁けないなら、やっていないことで裁かせてやる。」という名台詞とともに、爽快無比の逆襲劇が展開されます。

ただし、原作小説の1作目で描かれていた背景が映画では省略されているため、原作未読の観客にとっては

「なぜ元ヤクザが探偵をしているのか?」
「一緒に暮らす小学生の少女は誰なのか?」

といった疑問が残りやすく、やや不親切に感じる部分もあります。

そのため、作品としての魅力は十分にありつつも、実写化としての完成度は星3つという評価にしました。

作品概要と本記事のポイント

『アウト&アウト』は、木内一裕による「矢能政男シリーズ」第2作を原作とした実写化作品です。

物語は、元ヤクザの探偵・矢能政男が依頼人に指定された場所へ向かうところから始まります。

しかし、到着した時には依頼人はすでに拳銃で殺害されており、さらに奇妙な仮面をつけた男に罪をなすりつけられてしまいます。

ここから事態は思いもよらぬ方向へ転がり、矢能は否応なく事件の渦中へと巻き込まれていきます。

本記事では、原作と映画の主な違いや、改変点をわかりやすく整理して解説します。

映画『アウト&アウト』の紹介

やったことで裁けないなら、やっていないことで裁かせてやる。

監督:原田眞人
出演:遠藤憲一、岩井拳士朗、白鳥玉季、小宮有紗、竹中直人、高畑淳子、要潤、ほか
上映時間:107分
公開:2018年11月16日

小説『アウト&アウト』の紹介

最も危険な探偵の反撃が始まる。

著者:木内一裕
出版社:講談社
刊行日:2009年7月/文庫化:2011年7月(講談社文庫)

『アウト&アウト』あらすじ(ネタバレなし)

探偵の矢能政男は、懇意にしている菱口組系組長・工藤の紹介で、安田という男に会いに向かいます。

しかし現場に着いた時、依頼者の安田はすでに銃で殺害されており、そこでクリントンの仮面をかぶった謎の若い男と居合わせます。

男は矢能の指紋を付けた銃を持って逃走します。

矢能は安田の死体を処理したうえで、自分をはめた“クリントン”の正体を追い始めます。

やがて辿り着いたのは、悪事を隠蔽する衆議院議員・鶴丸清彦。

しかし計画は思うように進まず、矢能はフリーストレスの情報屋、工藤と子分の篠木、そして手懐けている悪徳警官・次三郎らと手を組み、最後の逆襲劇へと踏み切ります。

原作と映画の違い(ネタバレあり)

池上数馬の闇

映画

映画版では尺の都合により、安田を殺害した池上数馬の生い立ちや背景が大きく省略されています。

安田殺害についても、師である堂島哲士から依頼されて動いていた、という最低限の情報のみが描かれています。

一方で、母の月命日に花を供える描写など、池上の優しさを示す要素は残されており、彼の“闇”と“人間味”の両面を簡潔に表現する構成になっています。

原作小説

池上数馬は、幼いころから父親の暴力、貧しさ、孤独に耐えながら生きてきました。

小学5年生の時に両親が離婚し、母親と二人で貧しい生活を送るようになります。

中学に入ると、貧しさと無口な性格が原因でいじめの標的となり、数馬は「強くなりたい」と願うようになります。

そんな折、剣術道場の堂島哲士と出会い月謝を払えない数馬は“練習生”ではなく“弟子”として堂島から剣術を教わることになります。

24歳になった数馬は、堂島から安田殺害を依頼されます。

断るという選択肢はなく、犯罪としての葛藤を抱えながらも、周到な準備を重ねて安田を殺害します。

しかしその直後に、見知らぬ男──矢能政男──が部屋に入ってきます。

その後、矢能に追い詰められ、さらに衆議院議員・鶴丸に裏切られた数馬は、死を目前にして最後の力を振り絞り、矢能に「鶴丸を地獄に落としてほしい」と依頼します。報酬は100万円。探偵としての矢能に託した、数馬の最期の願いでした。

同居する少女|黒木栞

映画

映画では、物語の冒頭から矢能と小学生の少女・栞が同居しており、原作未読の観客にとっては「なぜ一緒に暮らしているのか」と疑問が残る描写になっています。

この設定は、小説「矢能政男シリーズ」の第1作『水の中の犬』の後半で描かれた出来事がそのまま引き継がれているためです。

シリーズ第2作である『アウト&アウト』では、すでに矢能と栞が生活を共にしている状態から物語が始まるため、映画でもその関係性が前提として扱われています。

原作小説

矢能がまだヤクザだった頃、ある理由で見張っていた探偵の依頼人の女性には、小学1年生の娘・黒木栞がいました。

栞の父親は彼女が生まれる前に殺害され、依頼人である母親も命を奪われてしまいます。

矢能は探偵から「少しの間だけ」と栞を預かりますが、その探偵も殺されてしまい、行き場を失った栞を矢能がそのまま引き取ることになります。

まとめ|ラストの逆襲劇は見事

『アウト&アウト』は、どこか昭和映画の香りをまとった、シンプルでテンポの良いハードボイルド作品です。

物語は冒頭からスピーディーに展開し、その勢いのままラストまで一気に駆け抜けます。

中でも、衆議院議員・鶴丸清彦に対するラストの逆襲劇は圧巻で、キャッチコピー「やったことで裁けないなら、やっていないことで裁かせてやる。」を体現する見事なクライマックスとなっています。

少女・栞との同居や、池上数馬の動機など、深掘りされない設定もありますが、細部にこだわらずテンポ良くスッキリ楽しむのがこの作品に合った鑑賞スタイルと言えるでしょう。